宇都宮を代表する歴史的なエリア「泉町」で1軒目に呑むべき旨い酒場5選。レトロな昭和の雰囲気とモダンなバー文化が共存する大人の町
泉町はかつて「北関東最大の歓楽街」や「栃木の不夜城」などと呼ばれた宇都宮市きっての歓楽街。最盛期はキャバレー、スナック、料亭、バーが密集し、1,000軒以上の店が並び、「肩がぶつからずには歩けない」と言われるほど、夜な夜なサラリーマンや経営者で溢れていました。
今は社会環境・経済状況などの変化により、最盛期と比べると落ち着きを見せていますが、当時の喧騒を知る人々にとっては、懐かしくも誇らしく、最近の人にとっては昭和のレトロな雰囲気溢れる落ち着いた大人の町として人気のエリアです。
そんなオールド宇都宮「泉町」で1軒目に行くべき旨い酒場を5軒紹介します。

入母家(いりもや)

泉町でおでんと言えば、誰もが口を揃えるのが「入母家(いりもや)」。
メイン通りから離れた釜川沿い、お地蔵さんの近くにあり、落ち着いた雰囲気の中で名物のおでんが味わえます。
こだわりのおでんは、黒いつゆで煮込まれた関東炊きではなく、出汁がしっかりと染み込んだ上品で優しい味わいが特徴です。定番の大根、たまご、はんぺんはもちろん、季節ごとの練り物や創作おでんも人気です。
おでん以外にも炭火で焼かれる焼鳥や豚バラ、創作串焼きが充実。お酒に合う一品料理も豊富で、一年を通して何度足を運んでも飽きないメニュー構成です。

まずは、栃木県内の地酒から、私の故郷である市貝町の「惣誉」特別純米酒辛口を冷で。
お通しはおから煮。しっとりとした上品な味わいで、おからのほのかな甘みに惣誉の辛口がよく合います。
カウンターからおでんを品定め。
この店はおでん種が豊富で、注文に迷うほどです。
直径6センチ、高さ12センチほどある大根と、がんもどき、車麩を注文。 大根は中までしっかりと出汁が染み込んでいます。冬の大根は肉厚で辛みが少なく、甘みが際立っていて特に美味しく感じます。
がんもどきは豆腐に枝豆、タマネギ、ひじき、にんじん、そして海老などの魚介系が練り込まれた、ふっくらふわふわとした優しい食感。
車麩はおでん出汁の旨みをたっぷりと吸い込んでおり、出汁の旨さをストレートに味わえる一品です。

菜の花の辛し和えを追加。
注文してから茹でてくれるので、しゃきっとした食感と和からしの刺激で、口の中で一足先に春を感じられます。

おすすめメニューから、季節のおでん「かきのおでん」を追加。
かきの上品な出汁で食べるおでんに、思わず冷酒のお替わりを催促してしまいます。

焼鳥の盛り合わせも注文。
炭火で焼かれた焼鳥は、外側が香ばしく中はみずみずしい仕上がり。

豚バラチーズ焼きは、余分な脂を落としつつチーズの旨味がプラスされています。

仕上げは、ご飯にがんもどきを乗せてもらいます。
おでんの名店「お多幸」では、茶飯におでんの豆腐を乗せた「とうめし」が名物です。
東京勤務時代に初めて食べましたが、それ以前から宇都宮でも茶飯に厚揚げやがんもどきを乗せてもらって食べていました。今回は先ほど食べて美味しかったがんもどきを乗せ、崩しながらお茶漬け感覚でさらさらと。締めに相応しい一杯ですが、もちろんお酒にも合います。
<入母家(いりもや)>
宇都宮市本町8-13
☎028-643-9339
営業時間 17:00~ 0:00
定休日 不定休
酒楽 あかね家
泉町通りの真ん中の信号近くにある焼鳥屋。
惜しまれつつも閉店してしまった泉町の老舗人気蕎麦屋「たかしお」の娘さんが、同じ場所で焼鳥屋を開店されました。「たかしお」は勤務先が近いこともあり、昼時になると社員食堂のように賑わっていました。いつも「もりそば」と「たぬきそば」の2品を注文。2品食べても600円程度という、安くて旨い手打ち蕎麦屋でした。あかね家さんでは、締めに「たかしお」の蕎麦が味わえるので、締めから逆算してお酒のアテを注文していきます。

地酒の中から、地元宇都宮の酒「四季桜」の冷酒からスタート。
宇都宮酒造の「四季桜」は、“しきざくら”と呼ぶ人が多いですが、本来は“しきさくら”と呼びます。濁りのない澄んだ酒造りから濁点を嫌い、濁点を使わず「しきさくら」と呼ばれて市民に愛されています。

お通しは手作りのパスタサラダ。
いい店の条件は、お通しにも手を抜かないことです。

一品目は冷酒に合うお刺身から。大好きな〆鯖を注文。
甘みの効いた浅めの酢〆にされた鯖は、辛口の日本酒と相性が良く、甘さと辛さのコントラストを感じて思わず笑顔になります。

続いて本日のおすすめメニューから「旬の3点盛り」を。8種類の小鉢から3点を選んで味わえます。今回は「ニラ茎漬」と「赤貝しょうが煮」、「ほうれん草どんぐりわさびマヨ和え」を選択しました。
2月はニラが肉厚で甘い一番ニラの収穫時期。ニラの根元、茎の部分を浅漬けにした「ニラ茎漬」はシャキシャキ食感と甘みが日本酒に合います。
「ほうれん草どんぐりわさびマヨ和え」は、宇都宮で収穫したどんぐりをアク抜きして和え物に。落花生とも違う滋味深いお酒のアテ。
「自家製のしもつかれも少し食べてみます?」と女将さんからさらに一品。
栃木県の冬のソウルフード「しもつかれ」は、正月の新巻鮭の頭と節分の大豆、大根や人参、酒粕を煮込んだ郷土料理です。見た目からか好き嫌いも別れますが、きりっとした地酒にはばっちり合います。
お酒に合う一品料理も豊富ですが、炭火で焼かれる焼鳥も看板メニュー。

那須地鶏を使用したもも焼を塩で。
焼鳥屋の実力を測る際は、まずはもも塩焼きを注文します。素材の良さと火入れでその店の腕前を図り知れます。もも塩焼きが旨ければ、何を注文しても旨いはずです。長年飲み歩いて得た経験則です。

ねぎ間や皮、レバーなど基本部位もありますが、創作串も充実。
ささみ大葉ジェノベーゼを追加。
自家製ジェノベーゼソースをトッピングしたイタリアンな創作串。
日本酒に合いますが、ワインが欲しくなる一品。

〆は本命の「たかしおのもりそば」
思い出の手打ち蕎麦は、来店者のほとんどが注文すると言います。それほど多くの宇都宮市民に愛され惜しまれつつ閉店した「たかしお」の蕎麦は、泉町の栄枯盛衰を見守ってきた市民の記憶グルメ。食べながら呑んでいると、昔の思い出が蘇ってきました。

最後の蕎麦湯もやさしくフィナーレに相応しい一杯。
美味しく戴きました。

女将さんから「泉町百年史」を見せていただきました。
昭和49年当時のお店が掲載されていて、繁華街「泉町」の歴史を残している貴重な資料。
<酒楽 あかね家>
宇都宮市泉町2-15
☎028-621-7755
営業時間 17:30~
定休日 不定休
きょうや
本町交差点近くのビルの地下から釜川沿いの風情ある一角に移転し「京屋」から平仮名の「きょうや」に。
釜川沿いの風情ある一角で、連日お客さんで一杯の繁盛店です。
仕入れにこだわる店主が、旬の魚介を中心に酒に合う旨い料理を提供してくれます。
冬のこの時期は脂ののった刺身と牡蠣料理を栃木の地酒とともに味わいたいところ。
基本、和食料理ですが、アヒージョやフライものなど洋食や創作料理も充実しています。焼酎やワイン、ホッピーなど注文する料理に合わせて飲む酒を選ぶのも楽しみのひとつです。

まずは大田原市の菊の里酒造の地酒「大那(だいな) 超辛口純米」を注文。
きりっとした辛口で芳醇な味わいは、脂ののった魚介料理に合わないわけがありません。

●刺身盛り合わせ
その日入荷した新鮮なお魚から選りすぐって盛り合わせにしてもらいました。
店主の魚介の目利きと丁寧な仕事ぶりが伝わってきます。

●那須高原和牛とぶつ切りねぎのすき焼き風
那須高原和牛の上質な脂が、割下と相まって和牛だけでなく焼いて甘みを増したねぎとも相性抜群です。
ご飯を注文すれば贅沢な牛丼になりますが、あくまでも酒の肴なので那須高原和牛とねぎの素材の甘みを堪能します。
甘辛いすき焼は辛口純米と相性抜群です。

●牡蠣ステーキ
季節料理から冬に美味しくなる牡蠣をステーキで。大粒の牡蠣をふっくら焼き上げてオリジナルステーキソースで。
牡蠣の甘みとバターを贅沢し使用したコクのあるソースも日本酒を加速度的に早めてくれます。

揚げ物を注文したのでホッピー(シロ)にスイッチします。

●牡蠣クリームコロッケ
大粒の牡蠣をホワイトソースに合わせたクリームコロッケ。
ソースは宇都宮の「ミツビシソース」。本町交差点近くにあったたこ焼きの人気店「相馬屋」が使用していたのがこの「ミツビシソース」。昔からこのソースにこだわって使用しているといいます。焼きそばもこの「ミツビシソース」を使用するほど宇都宮産にこだわっています。

●ほたるいか天ぷら
春を先取りしたほたるいかを刺身ではなく贅沢に天ぷらでいただきます。
ひと口嚙み締めれば、プチっとほたるいかのわたの旨味が口いっぱいに広がります。
ここでも店主の目利きと仕事の丁寧さと料理のセンスに驚かされます。
<きょうや>
宇都宮市本町2-1
営業時間 17:00~23:00
定休日 日、祝日
割烹 たかしま
泉町通りの路地裏に佇む老舗割烹。
店内には生け簀があり、新鮮そのままの鯵やつぶ貝を味わえます。旬の魚料理に定評があり、定番の日本産鰻を使用した「うな重」は、注文を受けてから捌き、蒸してから焼き上げるふわふわでしつこくない味わいです。
夜だけでなくランチタイムでも新鮮な海鮮丼や焼き魚、煮魚定食がお手頃価格で味わえるため、近隣の会社員で連日にぎわっています。
泉町が寂しい状況になっても、昔からの常連さんに支えられ変わらぬ活況を呈しています。

まずは、益子町の外池酒造の「燦爛(さんらん) 辛口純米」をチョイス。
実家の隣町にあることから、「燦爛(さんらん)」に使用する酒米「五百万石」を田植えから収穫、仕込みまで体験できる「酒造り米作り体験」を家族で参加するほど昔から愛飲している地酒です。

●刺身盛り合わせ
本マグロの中トロと寒ひらめ、クジラの赤身の3点盛り。
本マグロは見た目で美味しいとわかるビジュアル。程よく脂ののった中トロは口の中で溶ける食感。
クジラ刺はみずみずしくさっぱりとした味わい。生姜醤油でひと口頬張れば、本場長崎で食べたくじら刺しと比べても全く引けを取りません。
寒ひらめの刺身はこの時期だから味わえる脂ののったしっとりとした味わい。
赤身、白身と味と食感の違いで楽しませてくれるお刺身の盛り合わせは、店主のセンスの良さを感じさせてくれます。

●本マグロのほほ肉ステーキ
お刺身の本マグロが美味しかったので、ほほ肉をステーキで。
マグロのほほ肉は筋肉質で繊維もしっかりしているので、初めて食べると魚ではなく柔らかい動物のお肉と勘違いするほど。
この希少部位をわさびと一緒にさっぱりと味わえば、辛口純米があっという間に底を尽きます。

●牡蠣フライ
今が旬のぷっくりとふくらんだ大ぶりの牡蠣をフライでいただきます。
生牡蠣か焼牡蠣迷った挙句、定番の牡蠣フライに。
加熱することで牡蠣の甘みが増し、海のミルクとはよく言ったもので、コクのある芳醇な牡蠣エキスが堪らない一皿。
揚げたてをまずは塩で、次にソース、次にタルタルソースと幾重にも牡蠣の旨味が襲い掛かります。

●たこの唐揚げ
近海もののたこは、唐揚げにしても絶妙な火入れで、硬すぎずぷりっとした食感と素材の甘みを感じる丁寧な仕事ぶり。
地酒はもちろん、ビールにも焼酎にも合うおススメの一皿。

●うな重
国産鰻を使用した自慢の「うな重」は、注文が来てから捌きます。蒸してから丁寧に香ばしく焼き上げたうなぎは、ふわふわ食感でコクがあってさっぱりとしたタレは真似のできないこのお店ならではの味です。
お酒を飲んだ最後の一品になりますが、うな重のふたを開けた瞬間に、お酒をもう一杯追加してしまうほど魅力的な料理になります。
<割烹 たかしま>
宇都宮市泉町2-7
☎050-3467-2344
営業時間 月~金(ランチタイム)11:00~13:30/月~土 17:00~23:00
定休日 日・祝日
御料理処 多喜川(たきがわ)
釜川沿いに佇む老舗料理店。
ふぐ鍋やすっぽん鍋などのコース料理から、創作一品料理までお酒のアテが充実しています。
高級店で敷居の高い料亭の雰囲気を醸し出していますが、仕事帰りにカウンターでひとり呑むサラリーマンも少なくなく、大衆割烹の趣も残した繁盛店です。
栃木県民のソウルフード「ちたけうどん」も1年中味わえ、旬の魚介や素材を使ったこだわりの料理は1年通っても飽きないメニュー構成になっています。
店内の手書きメニューも見逃さず、店主自慢の旬の料理を味わいたい。
接待や宴会に使用できる頼もしい老舗繁盛店です。

ここでは、真岡市の辻善兵衛商店 の「桜川 吟醸酒」を。
高校時代を過ごした真岡市の地酒なので、社会人になってから愛飲しています。
水がいいし、米も美味い地区なのでお酒が美味しくないわけがありません。
繊細なふぐ料理に合うにはずです。

●ふぐ刺
国産とらふぐを贅沢にお刺身で。
お皿の模様が透けるほど薄切りされたお刺身は、弾力もありもっちりとした食感。
ゼラチン質の皮も刺身とは異なるコリコリ食感で、ポン酢とさっぱり味わえます。

●ふぐ唐揚げ
贅沢に大ぶりにカットされたふぐの身を唐揚げに。
弾力ある厚切りのふぐの身は、パサつかずしっとり食感。油っぽさをあまり感じさせない職人仕事。
盛り付けのセンスも良く、目でも美味しさが伝わってきます。

●ふぐ鍋
国産とらふぐは切り身を見ただけでも素材の良さがわかります。
まさに贅沢としか言いようがない自慢の逸品です。
最後の〆の雑炊まで幸せが止まりません。

●う巻き
多喜川(たきがわ)は鰻も評判の料理。
酒の肴に合う「う巻き」は、香ばしくふっくらと焼き上げたかば焼きを、出汁の聴いた卵焼きで包み込んだ人気の一皿。

●きんき煮付け
高級魚きんきの煮付けは、脂ののった冬の時期に食べたい。
甘辛いタレで煮込んだ上品なきんきの身は、しっとりほろほろで、皮目の旨味が抜群です。頭含めた骨の周りの皮もしゃぶり尽し、残った煮汁もご飯を頼んで煮汁飯でお酒を楽しめます。
学生時代に南青山にあった小料理屋でアルバイトしていた頃から、きんきの煮付けは大好物。
ブランド服のデザイナーの綺麗なお姉さんが、いつも来店するときんきの煮付けを注文して、綺麗に食べ終えて煮汁をご飯にかけて、最後に熱燗を注文する姿にかっこいいなあと今でも覚えています。
大人になって真似して、粋な酒吞みを実践しています。

●牡蠣とほうれん草のクリーム煮
本来は牡蠣とわかめのクリーム煮でしたが、時間がかかるというのでほうれん草に代えて作ってもらいました。
生クリームとチーズのコクのあるソースに牡蠣の旨味が溶け込み、濃厚な味わい。濃厚な割にはグラタンのようなしつこさもなくさっぱりと味わえます。
タバスコではなくラー油を添えるところが和食屋っぽいです。

●あさり酒蒸し
あさりの出汁がしっかり出ているスープにわかめを加えた締めにも相応しい一品。
大粒のあさりは酒の肴にぴったりで、あさりの出汁が効いたたっぷりの汁と磯の香りを運ぶシャキシャキわかめは上品なお吸いもののよう。
シンプル故に素材の良さと店主の丁寧な仕事ぶりに脱帽です。
<御料理処 多喜川(たきがわ)>
宇都宮市本町7-8
☎028-622-9323
営業時間 11:30~14:00(ランチタイム)/17:00~23:00
定休日 日曜



































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